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小貝川野焼き

研究室時代のご縁の関係で、毎年恒例、茨城県は小貝川の河畔の「野焼き」に参加してきました。
これは、現地に生息する絶滅危惧植物の保全のために行われているものです。

 

2017小貝川野焼き01
植物と一口に言っても、その生き方は種によって様々です。
ひたすら早く大きく成長し、空間を早く占有することで、日光や栄養分などをいち早く独占するような戦略を持つもの。
乾燥地や酸性の強い土壌など、通常の植物にとってはストレスの大きい環境に何らかの形で適応することで競争を避ける戦略を持つもの。
そして、暗い林床などにおいて、通常時はタネなどのかたちで休眠し、落雷によって木が倒れたり、人による伐採が行われたりといったことによって、現存する生物群集が破壊(これを生態学では「攪乱」と言います)された際に一時的に生じた好適な環境(光が地面まで届く、等)において、短い期間で発芽・成長・生産を行うという戦略を持つもの。
 
今回の保全対象となっているのは、3番目に上げたタイプの特徴を持ちます。
生態学では「攪乱依存種」などと呼ばれます。
 
かつて日本では、水辺のヨシ原や里山などにおいて、ヨシを採取してヨシズを作ったり、木を切ってきて薪として使ったりといったことが行われていました。
また、治水が十分に行われていなかった頃は、川の氾濫頻度も今よりはるかに多く、その際にはヨシが倒れたりすることなども起きました。
これらが攪乱として機能し、それにより攪乱依存種は保たれていました。
 
翻って現代では、ヨシ原や里山の利用は大幅に減り、治水によって河川の氾濫頻度も大幅に下がりました。
こうしたことによって、地上はヨシなど競争に強い種が優先することとなり、地表に日光が届かなくなり、攪乱依存種が芽生えることができるような環境が大幅に減りました。
攪乱依存種の種子などは、概して長期間にわたって土の中で休眠状態で生存することもできますが(散布体バンク)、それでも時を経るにつれて少しずつ死んでしまいます。
好適な環境がない状態が長期間続けば、いずれ絶滅してしまいます。
 
ちなみに私は昔、その散布体バンクに関する研究をやっていました。
詳しくはこのあたりを。
 
そこで今回は、冬場に枯れて地上に残ったヨシ・オギなどといった大型の植物を焼き払うことで、地表面での光量を確保するということを行ったわけです。
火を使って人為的な攪乱を起こすわけですね。
副次的な効果として、燃えた灰が地表面に落ちて地面が黒くなることで、地面が日光を吸収しやすくなり、特に春場以降、地表面温度の日較差が大きくなる、というものもあります。この温度の日較差が発芽のトリガーになっているような植物もあったりします。
 
今回は、こんな感じで焼きました。
 
2017小貝川野焼き01
これで春には、

 

ノウルシ

ノウルシ

ヒメアマナ

ヒメアマナ

ヒキノカサ

ヒキノカサ

トネハナヤスリ

トネハナヤスリ
等々、絶滅が危惧される貴重な植物が出てくるはずです。
 
と、まあたまには音楽とは全く関係のないこんな話もいかがでしょうか。(笑)


Category:日々徒然| 2017年1月22日

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